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ブランド・ブランディングとは何か

DATE . 2024.02.17

Category : ブランディング

Nakamura Hiroki
ジャーナルを書いた人Nakamura Hiroki

Creative Director

小売業からデザインの道へ進み、3度の起業を経て、現在はブランディングを軸に中小企業の支援を行う。WEBを活用したマーケティングが好き。根拠はないが"招き猫体質"らしい(笑)

ブランド・ブランディングとは何か

ブランディングを始めたい方やブランディングについて学びたいと考えている方のために、ブランドとブランディングに関する基本をわかりやすく解説する「初めてのブランディング講座」をお届けします。

ブランドとは何か?

ブランドと聞いて、多くの人が「高級なバッグや車、時計」「唯一無二の存在」「価格が高いもの」といったイメージを持つかもしれません。実は、「ブランド」という言葉は、古ノルド語の「brandr(ブランドル)」が語源で、「焼印をつける」という意味があります。これは、8世紀から14世紀にかけてスカンジナビアで使用されていた言語で、家畜に所有者を示す焼印を押す習慣がありました。このことから、「識別されること」がブランドの起源となります。

つまり、ブランドとは「認識されている状態」を意味します。例えば、いくつかのロゴマークを見た際に、知っているものと知らないものがあれば、知っているロゴがその人にとってのブランドです。ブランドは個人の主観によって成立します。

ブランドには状態がある

ブランドには「プラス」「ゼロ」「マイナス」の3つの状態があります。良い印象を持つブランドがプラス、特に印象がないものがゼロ、悪い印象を持つものがマイナスです。企業としては、プラスの状態を維持することが重要です。

好印象なブランドになるメリットは大きいです。ニーズが生じた時に、顧客の選択肢に入ることができます。選ばれやすくなるだけでなく、価格設定の自由度が高まります。例えば、スタバはコンビニのコーヒーよりも価格が高いにも関わらず、多くの人に選ばれます。これは、ブランドへの好感度が影響しています。好きなものに対しては、価格は二の次となる傾向があります。

好印象なブランドになることで、価格や機能だけでなく、ブランドの価値で勝負できるようになります。これは、ブランディングの重要な目標の一つです。

ブランディングとは何か?

「ブランディング」と聞いて、どのような印象をお持ちでしょうか?

ロゴを魅力的にすること
デザインに統一感を出すこと
これらは多くの方が持つ一般的な印象かもしれません。

デザインの要素は、確かにブランディングにおいて重要な役割を担います。外見が第一印象を左右し、関心を引くためには見た目の魅力が不可欠です。

しかし、それだけでは不十分です。

ブランディングとデザインの関係を、恋愛と結婚に例えてみましょう。

恋愛をしている時、相手に良く思われたいと願い、しばしば自分を飾り立てます。例えば、高価なスーツを着こなし、豊かな生活をアピールすることもあるでしょう。これによって、相手との関係を築くことができるかもしれません。

しかし、実際に関係が始まると、飾った自分を維持するのが疲れることや、本来の自分が露呈してしまうことで、関係が悪化する可能性があります。

ブランディングにおいても同様です。デザインだけに注力しても、最終的には顧客に愛想を尽かされるリスクがあります。魅力的なデザインは重要ですが、それだけに依存するのはリスクが伴います。

ブランディングとは、具体的には「ファン作り」を指します。ファンを増やすためには、マーケティングが不可欠です。マーケティングは「売れる仕組み作り」、ブランディングは「売れ続ける仕組み作り」です。これらの関係は、恋愛が結婚につながるようなものです。マーケティング(恋愛)を経て、ブランディング(結婚)へと進むのです。

恋愛を経て結婚に至ると、お互いの好意が深まり、強い絆が生まれます。ブランディングも同様に、マーケティングの成果の上に築かれます。ただの感覚ではなく、戦略的にブランディングに取り組む必要があります。

長期的に愛されるためには、単に見た目を良くして選ばれるだけでなく、「自分たちらしさ」を通じてファンになってもらうことが重要です。

ブランドの正体

ブランドは、個々人のイメージによって形成されます。前回も触れましたが、ブランドは識別される状態を指し、未知のものにはブランドという概念が適用されません。さらに、ブランドが識別されているとしても、それぞれの人が持つブランドイメージは異なります。例えば、一人の人が「マクドナルド」に良い印象を持つ一方で、別の人は悪い印象を抱くかもしれません。つまり、ブランドは個人のイメージに基づいて構築され、それは人によって異なります。

では、このブランドイメージはどのように形成されるのでしょうか?人間関係との比較で考えると理解しやすいかもしれません。例えば、初めて出会った人に対する第一印象から「優しそう」と感じ、その後の交流を通じて「人情深い」というイメージを確固たるものにしていくように、ブランドイメージも初めの印象と繰り返しの接触によって形成されます。フェラーリを例に取ると、「お金持ちの車」というイメージがあるのは、メディアを通じてそのイメージが繰り返し提示された結果です。

ブランドは育てるものです。どれだけブランド側が「こう思ってほしい」と望んでも、受け手がどう感じるかはその人次第です。人の心は操作できません。だからこそ、時間をかけ、繰り返しの接触を通じてブランドイメージを育てていく必要があります。ブランディングが一朝一夕には成し遂げられない理由はここにあります。

大切なのは「どう思われたいか」です。例えば、「ゆったりとコーヒーを飲みたい」と思った時にスタバが思い浮かぶのは、「ゆったりとコーヒーが飲める場所」というイメージがあるからです。これはスタバが意図的に作り上げたイメージの結果であり、偶然ではありません。スタバは、第三の場所としての快適な空間を提供することを目標に、接客や店内の雰囲気を大切にしています。これにより、「ゆったりとコーヒーが飲める場所」というイメージが形成されました。

ここで重要なのは、ブランドを形成するためには「どう思われたいか」が明確でなければならないこと、そしてその「どう思われたいか」に個性がなければ、単なる一つのブランドに過ぎなくなってしまうことです。ブランドの個性とは、前回述べた「自分たちらしさ」です。これは、飾り立てるのではなく、自分たちの本質を活かした「らしさ」であり、ブランドを特徴づける要素となります。

ブランドらしさとは

愛されるブランドを築くためには、「らしさを見つける」「らしさを表現する」「らしさを育む」という3つのステップが必要です。ブランディングにおいては、これらのステップを順番に守ることが重要です。

らしさを見つける

「らしさを表現する」はデザインの段階にあたりますが、まず「らしさを見つける」ことができていなければ、表現することはできません。なぜなら、デザイナーは何を表現すればいいのかがわからないからです。ブランディングへの取り組みは、「らしさを表現する」から始めるのではなく、正しい順序で進める必要があります。そこで今日は、ステップ1「らしさを見つける」に焦点を当てて解説します。

「らしさ」とは、本質的に「素の自分」を意味します。これは、個人における自然な振る舞いや、企業ならばその本来の姿、ブランドであればその核となる特徴を指します。ブランディングでは、言葉と行動の不一致は避けるべきです。なぜなら、ブランドイメージは繰り返しの接触によって心に築かれ、言っていることと行っていることが異なると、消費者は混乱や不信感を抱くからです。見た目を良く見せようとすることは、真実とのギャップを生み出し、結果的に問題を引き起こします。よって、本来の姿を基にブランドを築いていくことが大切です。

「らしさ」には、「選ばれるための独自性ある個性」が含まれる必要があります。単に本来の姿を見せるだけでは不十分で、その中に消費者に選ばれる理由が必要です。この「独自性」は、一般には「強み」として認識されます。しかし、多くの企業が表面的な「強み」を挙げがちですが、それは実際には「独自性」ではないことが多いです。重要なのは、消費者の視点から見たときにどのような強みがあり、他のブランドと比較してどのような独自性があるかを見極めることです。

多くの企業が「独自性」を見つける過程で「圧倒的な強み」がないと感じるかもしれません。しかし、「圧倒的な強み」がないことは普通です。そんな強みがあれば、すでに業界トップにいるはずです。でも、強みは必ず存在します。企業がこれまで続いてきた理由があり、そこには必ず何らかの強みが潜んでいます。じっくりと深堀りして、その強みを見つけ出してください。

らしさを表現する

「らしさ」に独自性ある個性が必要とされ、その発見後には「らしさの表現」が続きます。この段階では、デザインを通じた表現が中心となります。ここで、具体的な「らしさ」を体現したブランドの例を紹介します。

BAKE


主力商品「BAKE CHEESE TART」で知られるBAKEは、「1Brand = 1Product」の理念のもと、チーズタルトを始め、シュークリームやアップルパイ、バターサンドなど様々な専門店を展開しています。全店が工房一体型で、常に出来立てを提供しています。「Authentic & Joy」をコンセプトに掲げ、真摯なものづくりから生まれる感動体験を顧客に提供しています。そのこだわりは、チーズタルトの品質はもちろん、店舗デザインや販売ツールにも反映されており、「お菓子を、進化させる。」という会社のビジョンとも一致しています。

レッドブル


「翼をさずける」というスローガンで知られるレッドブルは、飲料以上のもの、エキサイティングな体験やスリル、冒険を提供するブランドとして位置づけられています。創業者のビジョンがパッケージデザインにも反映され、その雰囲気やイメージを消費者に伝えています。

ガリガリ君


長年にわたり親しまれているアイスキャンディー「ガリガリ君」は、「元気で、楽しく、くだらない」という世界観を持っています。このコンセプトはパッケージデザインにもしっかりと表現されており、その「らしさ」が際立っています。

これらのブランドから見えるのは、「らしさあふれるデザイン」の背後にあるコンセプトや哲学が、そのブランドの独自性を際立たせていることです。「らしさ」を明確にすることで、デザインへの落とし込みもスムーズに進み、デザインの質を判断する基準も明確になります。

らしさを育む

ブランドを構築する際、最初に必要なのは認知を得ることです。ただし、単に認知されるだけでは不十分です。「自分たちらしさ」を感じてもらえるような認知活動が重要です。このような活動を「ブランド体験」と呼びます。消費者がブランドに接触した際にどのような体験を通じて「自分たちらしさ」を伝えられるかを戦略的に準備する必要があります。

AISASとカスタマージャーニー

ブランド体験を計画する上で役立つツールには、AISASモデルとカスタマージャーニーマップがあります。

AISASは、消費者の購入プロセスを表すモデルで、以下のステップから成ります:

Attention(認知)
Interest(興味)
Search(検索)
Action(行動)
Share(共有)
このモデルにより、消費者が感情を変化させ、最終的に商品やサービスを購入に至る過程が示されます。

カスタマージャーニーマップは、消費者が商品を認知してから購入し、購入後に至るまでの全体の流れを示すツールです。例えば、「Attention(認知)」の段階で、目標とする消費者がどのような状態にあるかを予測し、ブランドに接触した際の感情や行動を計画します。

この過程を通じて、意図的に「らしさ」を体験してもらうことで、ブランドイメージが構築されます。

ペルソナの重要性

カスタマージャーニーマップを作成する際、特に重要なのがターゲット消費者、すなわち「ペルソナ」を明確にすることです。組織やチームでカスタマージャーニーマップを作る場合、それぞれが異なるターゲット像を持っていては一貫性がなくなります。したがって、ブランディングを行う際にはペルソナを明確に設定することが必須です。

ペルソナとは

「らしさ」を伝える際、対象を絞らずに広く伝えようとすると、結局は誰にも響かない可能性があります。情報発信する際には、「誰に」「何を」伝えるかを明確にすることが重要です。この「誰に」がペルソナにあたります。

ペルソナについて

ペルソナは「ニーズを持った象徴的な人物像」を指します。ブランディングにおいては、自分たちに都合の良い顧客ではなく、客観的な顧客視点から「ニーズを持った象徴的な顧客」を設定することが重要です。

ターゲットとペルソナの違い

ターゲットは比較的広範囲を指し、例えば「30代〜40代の女性」のように定義されます。対してペルソナはもっと具体的に「35歳女性」のように設定します。この違いは、対象をどれだけ絞り込むかにあります。絞り込むことで、「ニーズ」に基づいた効果的なアプローチが可能になります。

インテリア雑貨のフランフランが「都会で一人暮らしをする25歳のOL、A子さん」とするように、ペルソナを設定することで商品や店舗デザイン、販促物がターゲットに響くようになります。そして実際には、幅広い年齢層の顧客がそのニーズを持っているため、結果として多くの人に受け入れられます。

ブランディングにおけるペルソナの重要性

ブランディングは「らしさ」をブランド体験を通じて伝える作業です。消費者がブランドに接触する際の体験全てがブランドイメージに影響します。これを一貫して伝えるためには、ペルソナを通じた共通認識が非常に重要です。

ペルソナを具体的に設定することで、ブランドづくりに関わる人たちの間で共通認識が生まれ、デザインの方向性も明確になります。「このデザインはペルソナにとってどうか」という客観的な基準で判断することができるようになります。

ブランディングにはペルソナが欠かせないということがお分かりいただけたかと思います。ニーズを持った象徴的な人物像を作り、ブランドメッセージを効果的に伝えてみてください。

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